新卒採用のメリットとは
人事担当者ならばすでに十分ご存じかもしれないが、最初に新卒採用にはどのようなメリットがあるのかをまとめておこう。
1) 均質な若年労働力の確保
日本の新卒者は、3月に大学を卒業し、4月から働きはじめるというパターンが定着している。そのため、新卒採用を行うことで、年齢・学歴・社会経験などの面でほぼ均質な人材を、同時期にまとめて迎え入れることができる。採用、受け入れ手続き、教育などを一括して実施できるため、一人当たりのコストダウンも図れる。
2)コア人材、リーダー候補の確保
将来、企業の中核を担い、経営の中心となるような優秀層の人材を中途採用で獲得することは非常に難しい。ポテンシャルの高い新卒者を採用し、社内で育成する方が確実性は高いと考えられる。
3)組織の活性化・強化
若い新卒社員が入ってくることで、組織全体がリフレッシュする。既存社員は、新入社員に教えることで経験を言語化し、自らも成長できる。また、「同期」という横のつながりを持つ新卒は、縦割りの組織に横糸を通すことができる。部門間の連携などで重要な役割を果たす可能性がある。
4)企業文化の継承
特定の企業カラーに染まっていない新卒は、自社の風土になじみやすく、伝えていきたい企業文化の担い手としては最適である。バブル崩壊後の数年間、新卒採用を極端に抑制していた企業では、その後ベテランと若手をつなぐ中堅層の薄さに悩まされる例が見られた。そのため、新卒を毎年定期的に採用し、年代別の組織構成を維持していく意味を見直す企業が増えている。
5)採用活動が企業広報にもなる
中途採用に比べ、新卒採用の場合は母集団を大きく取るのが一般的である。メディアや会社説明会などを通じて、企業の生の姿を広く告知することになり、将来の顧客や事業パートナー、(中途採用で入社する)従業員を生み出すPR活動ともなる。
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こうしたさまざまなメリットがある一方で、新卒採用は企業にとって大きな「先行投資」でもある。新卒社員には就業経験がなく、入社後しばらくは戦力化しない。つまり教育期間中は純粋なコストとなってしまうのだ。このコストには新卒者にかかる経費のほかに、OJTも含めて教育を担当する社員の人件費や時間も計算しなくてはならない。 新卒採用は、こうした先行投資の負担を吸収する体力を持った企業が行える採用だといえるだろう。そのため、中途採用が小規模企業や設立されたばかりのベンチャー企業などでも行われるのに対して、新卒採用は、ある程度の規模があり、また組織的にも確立された企業を中心に行われるのが一般的となっている。