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新卒採用の実務(3)選考の方法

<INDEX>
(1)書類選考
(2)筆記試験
(3)適性検査
(4)面接試験
(5)健康診断
(6)採用選考上での留意点
(7)個人情報の取り扱い

募集活動の次のステップが選考である。選考する際の方法には、「書類選考」「筆記試験」「適性検査」「面接試験」などがあり、これらの選考で求める基準に達した学生に対して内定を出すことになる。そのため、各選考が目的に合っていて、適正に行われていることが重要である。また、採用選考に割ける時間が限られる中、選考のポイントを絞り込み、それに適合した内容のものを効果的に実施することが求められる。

(1)書類選考

●履歴書・エントリーシートを提出してもらい、基本情報や志望動機をチェックする

書類選考は、応募者が募集要項などの要件を満たしているかどうかを確認することが主な狙いである。通常、成績証明書、卒業見込み証明書のほか、履歴書、エントリーシート(応募用紙)の提出を求めることが多い。

履歴書は、大学指定のもの、もしくは市販のものを学生に提出してもらい、氏名、生年月日、住所・連絡先、電話番号、学歴、免許・資格などの基本情報について確認する。ただし、履歴書では、志望動機、自己PRなど、“人となり”について記すスペースが足りないので、別途、エントリーシートを用いる企業が多い。エントリーシートは会社で様式を示し、それをダウンロードして提出させる方法が一般的である。ここでは単なる事実を聞くのではなく、記述された内容の背景にある理由やそこで得られた経験を今後どのように会社の中で活かしていきたいかなど、求める人材を見極めることのできる質問項目を設定することがポイントとなる。ただし、大量に送られてくるエントリーシートを限られた採用スタッフが、限られた時間で目を通すことになるので、複雑な内容にしたり、記載事項を多くしたりしないほうがよい。

提出された書類では、「これまでの履歴に問題はないか」「誤字・脱字はないか」「文章はしっかりと書かれているか」「内容に、説得力があるか」「働く目的や志望動機は明確になっているか」などを確認する。ここで採用目標数を勘案しながら、面接のステップに上げる学生を絞り込む。応募者数が非常に多い大企業などでは、エントリーシートを一次選考として位置付け、応募者を大きく絞り込んでいるケースもある。

(2)筆記試験

●「学力」「一般常識」「専門試験」で基本能力をチェックする

筆記試験は、社会人としての基本的な能力を確認するために行うもので、大きく「学力」「一般常識」「専門試験」の三つがある。学力は、国語、数学、英語など、これまで履修した科目の理解度を測る。一般常識は、メディアなどで報道されている時事問題や教養、常識などについてその関心や造詣の深さを探る。そして専門試験は、選考学科や専門分野についての知識を見る。技術系の学生の採用では、専門試験のレベルはある程度高度にならざるを得ないが、通常は必要なレベルをクリアしているかどうかを確認するためのものであり、難題や奇題を解かせるなど、あまり高いハードルを課す必要はないと思われる。

この他に、「作文・小論文」を課す企業も多い。課題を決め、その課題に沿って文章化する能力を見る。800字から1200字程度の作文や小論文でも相当数の情報を盛り込むことができるので、学生を多面的に見ることができる。その際の視点は、その人らしい切り口や見方からの意見が入っているか、文章の構成や展開など文章作成技術の巧拙はどうか、新聞などで報道されている内容(常識・教養)をどの程度理解しているか、などである。また、能力があるにもかかわらず、面接などが不得手で、能力を十分に発揮できない学生を発見する点でも有効である。

なお、デザイナー、カメラマン、コピーライターなど専門職としての採用を行う企業では、自分の作品を持参させたり、別途、課題を課したりすることで、職務遂行に必要な能力や適性を見る。

(3)適性検査

●さまざまなタイプの適性検査があり、目的に合ったものを利用する

適性検査は、応募学生の能力の把握、適性の把握、性格の傾向などを見るために実施される。採用選考では、応募者の知的レベルが水準に達しているか、配属職種との適合性はあるか、興味や関心がどの方向を向いているかなどを測定するための検査が各種利用されている。複数の人材サービス会社がさまざまなタイプの適性検査サービスを提供しているので、それぞれの検査の性格や特性を踏まえ、目的に合ったものの利用が可能である。また、結果が標準化され、自社の応募者層がどのクラスの学生で形成されているかが分かるなど、メリットがあるものも多い。

一般的に、適性検査で実施される内容は、以下の通りである。

知能検査 職務遂行上の基礎能力を診断する。計算、言語、記憶、判断、推理などの力を測る。
職業適性検査 各人の持っている能力が、どの分野で活かせるかを診断する。知能、言語、計算、照合、分類などの能力を測定する。
性格検査 行動的側面から各人の能力を把握し、その特性が職業遂行に与える影響力を診断する。

近年では、これらを総合的に診断する適性検査を採用する企業が一般的だ。ビジネスで必要とされる「行動的側面」「意欲的側面」「性格類型」「能力的側面」「職務適応性」などについて、応募者を総合的な側面から見ることができるため、採用選考の基本的な資料とするほか、採用後の配属、社員の自己理解や研修の素材など、さまざまな活用が可能だからだ。また、数学や国語能力に関する項目が含まれているため、一般常識試験を省略することが可能になり、適性検査と作文・小論文で一次試験、面接を二次試験とする採用選考のスタイルで実施するケースが多い。

適性検査の実施に当たっては、これまでの適性検査のデータ蓄積の中から、判断基準となる一定のラインを設けておくことだ。あるいは、職場で活躍している社員について予め実施しておき、管理者が日常業務を通じて熟知している人物像や能力と、試験結果を対照しておくと参考になる。この場合、社員には試験の趣旨を十分に説明して、協力してもらうことが必要である。

なお、適性検査は科学的なテストではあるが、その結果だけで人間の全てを判断することはできない。あくまで参考資料とするにとどめ、結果だけで採否を決定することのないようにしたい。

(4)面接試験

●素材としての可能性を見極めるために、潜在的なものを探り出す

採用選考の方法の中で、企業が最も重視するのが面接試験である。採用選考においては、“人の目”を介した試験が重要な意味合いを持つからだ。書類選考、筆記試験、適性検査などは一次選考、スクリーニングと言うべきもので、これらの結果を踏まえた上で面接試験を行い、総合的な評価から採否を決定する企業が多い。

面接試験には、大きく三つのスタイルがある。「個人面接」「集団面接」「集団討議面接(グループディスカッション)」である。それぞれに特徴があるので、自社の目的に応じて使い分けることが重要だ。

個人面接 一人ひとりに対する面接なので、質問の自由度が高い。特定の個人について、深く掘り下げて質問することができる。
集団面接 応募者それぞれを比較しながら、評定することができる。限られた時間の中で、複数の応募者の面接が一度にできる。
集団討議面接
(グループディスカッション)
5~10人を対象にテーマを与え、応募者間で自由に討議させる。それぞれの応募者のコミュニケーション力、説得力、表現力など、多面的な側面から評価することができる。

このように手法は異なっても、面接ではペーパー試験や書類では見ることのできない「モノの見方」「考え方」「人物」「反応の速度・的確さ」などを試し、「熱意・意欲」「適性」「入社意向」などを確認する。

そもそも面接の基本的なスタンスは、素材としての可能性を見極めるために、学生の潜在的な能力を探り出すことにある。単発的な質問を続けたり、書類で確認できることを改めて問うのは、その趣旨にそぐわない。書類の記載内容から派生して、さらに掘り下げる質問、考え方やモノの見方が鮮明になるような質問を心がけるべきである。通り一遍の質問では、就活ノウハウ本などで鍛えられた学生の本当の姿をつかむことはできない。面接時と入社後とで、学生の印象に大きなギャップがあったということのないよう、連続した関連質問を丁寧に行い、矛盾や学生の付け焼刃の対応を露呈させるテクニックが必要である。

(5)健康診断

●客観的・合理的で必要性のない健康診断は、就職差別につながる恐れがある

書類選考、筆記試験、面接試験を経て合格した学生の健康状態を確認するため、健康診断を実施する企業は多い。あるいは、採用段階の応募提出書類として、「健康診断書」の提出を求める企業もある。しかし、採用選考において健康診断を実施することは、公正な採用選考を行う上で問題がある。

厚生労働省では、憲法で保障されている基本的人権などを踏まえ、公正な採用選考の基本的な考え方として、「応募者の基本的な人権を尊重すること」「応募者の適性・能力のみを基準として行うこと」を求めている。つまり、客観的・合理的で必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施を、就職差別につながる恐れがあるものとして、配慮すべき事項と定めているのだ。自社の業務内容、募集職種が、採用段階で健康診断を行う必要性の高いものでないなら、あえて実施する必要はないと言える。

健康診断は労働安全衛生法の下、労働者を雇い入れた際の適正配置、入社後の健康管理に資するために行うものであり、採用選考時に画一的に実施するものではない。まして、応募者の採否を決定するために実施するものではないのである。

(6)採用選考上での留意点

●学事日程に十分配慮して行った上で、採用アプローチを考える

日本経団連では、「採用選考に関する企業の倫理憲章」において、「採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重する」と訴えている。言うまでもなく、採用選考の対象者は学生であり、学生の本文は学業である。採用選考を効率的に行いたい、採用選考を迅速に進めないと他社に人材を採用されてしまう、という企業の都合とは別次元の話なのである。そこで政府の要請もあって、2016年卒採用から、採用広報、採用選考に関わる活動が後ろ倒しされたわけであり、採用選考は学事日程に十分配慮して行う必要がある。

具体的には、「筆記試験、面接などの日程は学生と相談して決める」「学生が都合が悪いと申し出た際には、日程の変更を考慮する」「適性検査や筆記試験は、ウェブ上で行うなど学生の学業の負担にならない方法を取り入れる」「会社説明会や選考試験は平日の夕方以降、あるいは土曜日・日曜日・祝日などに行う」といった対応が考えられるだろう。学事日程への配慮を第一義に置いた上で、どうすれば自社の求める人材に対して自社をアピールし採用できるのか、その方法やアプローチを考える必要がある。

(7)個人情報の取り扱い

●職業安定法の規定に基づき、応募者の個人情報の扱いを適切に行う

履歴書、エントリーシートなど、採用選考の段階において、会社は学生から多くの個人情報を入手することになる。個人情報の取り扱いに関しては、職業安定法の第5条の4で「労働者の募集を行う者は、その業務の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、および使用しなければならない」と規定している。そしてこの規定を踏まえ、厚生労働省では「募集内容の的確な表示等に関する指針」を策定し、以下のような個人情報の取り扱いを求めている。

■個人情報の取り扱いに関する「指針」
収集禁止の個人情報 労働者の募集を行う者は、次に掲げる個人情報を収集してはならない。
  1. 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
  2. 思想および信条
  3. 労働組合への加入状況
個人情報の収集方法 個人情報は、本人から直接収集しなければならない。本人以外の者から収集するときは、本人の同意を得なければならない。
個人情報の保管・使用 個人情報の保管または使用は、収集目的の範囲にかぎらなければならない。
個人情報の適正管理 個人情報に関し、次の措置を講じなければならない。
  1. 個人情報を正確かつ細心のものに保つための措置
  2. 個人情報の紛失、破壊および改ざんを防止するための措置
  3. 正当な権限を有しない者による個人情報へのアクセスを防止するための措置
  4. 保管する必要のなくなった個人情報を適切に破棄または削除するための措置
秘密の個人情報の管理 求職者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には、他人に知られないよう、厳重に管理しなければならない。

*出所:「労働者の募集を行う者等が均等待遇、労働条件等の明示、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針」(厚生労働省、告示第141号)

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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