新卒採用.jpトップ > よくわかる講座&記事 > スペシャルインタビュー 海老原 嗣生さん 『ニッポンの「雇用」と「採用」のあるべき姿とは?』[3/4ページ]
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スペシャルインタビュー

ニッポンの「雇用」と「採用」のあるべき姿とは?[3/4ページ]
~日本企業の構造から雇用問題と新卒採用について考える

株式会社ニッチモ 代表取締役、株式会社リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ
海老原 嗣生さん
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「母集団形成」をどう考えればいいのか


--大学生の数が増えすぎて問題となっていますが、採用の間口を広くする意味での「母集団形成」として考えれば、必ずしも悪くないと言えますね。

今の大学の実態を考えると、大学数・生徒数ともに多過ぎるように思います。文部科学省も単に学術研究の場だけではなく、地域の輪になる、グローバルの接点になる、高度な実学を実践するなど、これまでの大学のあり方を変えるように提言していますが、なかなかうまくいっていません。

結局、明治時代に作られた、国家経営者と企業中枢部、そして研究者の三者を輩出するような形でしか、大学のカリキュラムが作られていないからです。その一番の典型として、ほとんどの大学が法学部、経済学部、文学部、教育学部といったパッケージからできていますが、これは実情から考えてもおかしいでしょう。近年、学部の再編が行われていますが、あまり目新しいものは出ていません。

だからこそ私は、大学では「企業人」として必要なことを教えるべきだと思います。これは、学生が採用面接を突破する時にも必要なことです。面接では、相手が質問した意図を読み取り、それに対して論理的・具体的に、しかも端的に話すという行為が求められます。これは営業や文章を書くような行為においても同様で、全ての仕事において必要とされるものです。要はコミュニケーション力と論理的思考力ということです。この二つがあれば、世の中にあるほとんどの仕事をすることができます。こういう能力を、大学で磨かなければいけません。

株式会社ニッチモ 代表取締役、
株式会社リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ
海老原 嗣生さん法学部や経済学部というのは、法律や経済を学ぶことが目的となっています。でも、私はそれを“手段”に落とし込むべきと思っています。今の時代的には、本当の目的は論理的な思考力とコミュニケーション力を学ぶこと。そのために、法律や経済を題材にする、という逆転の発想です。例えば、消費税を上げるべきか、上げるべきではないかという問題があったとします。それを金融的観点からディベートする。そうすると、いろいろな立場からその是非が出てくるでしょう。そうしたことを相手に対して、いかに分かりやすく説明し、説得することができるか。そういう授業を行うことによって、論理的な思考力やコミュニケーション力を鍛えていくことができます。

―― 2013年度採用に関する、企業へのアンケート結果を見ると、「学生の業界・企業に関する理解不足」「母集団形成がうまくいかないこと」「採用・選考機関の短縮化」を懸念する声が多いようです。また、学生のエントリー数が減少しているというデータもあります。そういった状況について、どのようにお考えですか。

母集団形成の段階では、採用予定数の100倍くらいのエントリー数を確保するというのが一般的です。しかし、本当にそれでいいのか、見直さなければいけない時期に来ていると思います。

まっさらな学生をゼロから育てるのであれば、ある程度の基礎力と自社の経営理念に対する共感があればいいでしょう。それなら100倍でなくても、30倍くらいで十分。私の経験からいっても、30人に会えば1人くらいは自社に馴染む人に巡り合えると思います。逆に、人数が多ければ、非常に粗い採用となってしまい、良い人材を採ることはできません。採用予定数の30倍くらいの人たちを、丁寧に一人ひとり見ていけばいいのです。

極端な例かもしれませんが、私の知っている中小企業では、面接という手法を止めてしまいました。「面接は人柄が一番見えない方法だ」と言うのです。履歴書・エントリーシートの類もなくしました。その代わりに、選考はハイキングを通して行うことにしています。ハイキングなら体力や元気があるかどうかも分かるし、疲れた人が出た時に荷物をすぐに持ってあげるような配慮があるかどうかも分かります。また、道に迷った時にはリーダーシップが取れるかどうかも見極められます。

学生も100社を超える数の企業に応募すれば、当然、企業に対する理解や研究は薄いものとなります。そして、企業側もあまりに多くの学生が来れば、学歴で切っていくようになります。こうした状況で、果たして適切なマッチングが図れるでしょうか。そう、そろそろ母集団形成という神話とおさらばする時期なのでしょう。


企画・編集:『日本の人事部』編集部

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