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「新卒採用」の注目ニュース

学びの充実、専門学校卒業者の8割が実感。一方、卒業後の年収に対する満足度は4割にとどまる~『専門学校での学びと社会への移行に関するふりかえり調査』:ベネッセホールディングス

[2016.08.24]

株式会社ベネッセホールディングス(本社:岡山市、以下ベネッセ)の社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」では、2016年3月、全国の「専門学校」(専修学校専門課程)を卒業した学歴を持つ20代から40代の社会人3,771名を対象に、専門学校での学びと社会への移行に関するふりかえり調査を実施しました。

 

近年、高等教育領域では、高大接続改革をはじめ「専門職業大学」(仮称)創設の検討など様々な改革が推し進められています。その一方で、既存の高等教育機関―とりわけ高等学校卒業者(過年度卒含む)の約2割の進学先として存在し続けてきた専門学校が、職業教育を通じてどのような学びの機会を提供し、学生の卒業後の人生や職業生活に影響を与えているのか、教育成果やその後の実態は十分に明らかにされてはいません。

そこで今回、卒業生の視点から、専門学校における職業教育の実態およびその成果と課題を明らかにし、その結果を広く世に発信していくことを目的に調査を実施しました。主な調査結果は、以下の通りです。

 

1)専門学校卒業者の約8割が学びが充実していたと回答。学びの充実度は大卒者と同等。

・専門学校時代の学びが「充実していた」(とても+まあ充実していた)と回答した比率は76.2%で、専門学校卒業者の約8割が学びの充実を感じている。

・2015年に大学卒業者約2万人を対象に実施した「大学での学びと成長に関するふりかえり調査」の結果と比較すると、大学時代の学びが「充実していた」と回答した比率は76.4%である。専門学校卒業者の学びの充実度は大学卒業者と同等である。

 

2) 職業教育を通じて協調性や勤勉性など非認知スキルの向上を感じている卒業者は約7割。

専門学校時代を通じて、学生はどのような資質・能力を獲得しているだろうか。学びの成果に関する上位5項目をみたところ、専門学校卒業者の約7割が、「人と協力しながらものごとを進める」(71.3%)、「何事にも粘り強く取り組む姿勢を持つ」(69.5%)、「学び続ける姿勢をもつ」(68.5%)など、自らの人生を切り拓いたり、社会的活躍を収めていく上で重要だとされる非認知スキル(粘り強く学びに向かう力や仲間と協力して取り組む姿勢など)の向上を感じている。

 

3)約6割の専門学校卒業者が、専門知識や資格以外に「基本的な学び方」や「社会人としての基礎的な能力」の役立ちを実感。

職業教育を通じて獲得した資質・能力や経験のうち、何が卒業生のその後の職業生活を支えているのか。

専門学校時代の教育成果や経験のうち、これまでの職業生活に役立っているものをたずねたところ、「専門的な知識・技能・ノウハウ」(66.0%)に次いで、「基本的な学習習慣や態度、学び方」(62.5%)、「社会人としての基礎的な能力(61.1%)「学習活動の中で必死に努力した経験」(58.5%)の比率が高い。一般的に専門学校は資格取得や即戦力育成が目的だと思われがちだが、「獲得した資格」(56.8%)と同等かそれ以上に役立ち度を感じている。

 

4)専門学校卒業者の約65%が現在の「働き方」「仕事上の地位」「仕事上の人間関係」に満足も、年収面の満足は4割にとどまる。

専門学校生は卒業後、どのような職業生活を過ごしているのか。現在の「働き方」「収入」「仕事上の地位」「仕事上の人間関係」に関する満足度をみたところ、専門学校卒業者の約65%が「働き方」「仕事上の地位」「仕事上の人間関係」に「満足」(とても+まあ満足)している。ただし年収についての満足は4割にとどまる。

 

5)専門分野によって卒業後の専門分野の「定着率」や「正規雇用率」、「平均年収」に違い。
大学卒業者(全体)との平均年収の差は約100万円。

専門学校卒業者は、現在どのような分野の仕事に、どのような条件で働いているのか。卒業後の社会での働き方について、専門学校在籍時の専門分野と関連する領域の仕事に就いている比率(「定着率」)、「正規雇用率」、「平均年収」の三つの観点から、専門分野別にその実態をみたところ、「定着率」は、医療分野(81.5%)や教育・社会福祉分野(69.0%)で高く、商業実務分野(34.2%)や文化・教養分野(21.8%)で低い。資格系と非資格系で明確な差がみられる。一方、「正規雇用率」と「平均年収」は、資格系の中でも衛生分野(41.6%、228万円)は低い、非資格系の中でも商業実務分野(61.6%、307万円)は高いなど、専門分野による差が大きい。また「平均年収」について大学卒業者(全体)と比較したところ、約100万円の差が確認された。

 

今回の調査から明らかになったことは次の3点です。

「青年期教育」としての職業教育の意義を再評価することが必要。

専門学校生は、専門的な知識・技能や資格取得以外に、職業教育を通じて基本的な学び方や社会人としての基礎的な能力を獲得したり、自己の適性や将来への関心を深めており、卒業後の社会・職業生活を通じてその学びの成果を実感していた。こうした「青年期教育」としての職業教育の意義も再評価した上で、これからの高等教育における職業教育の在り方を検討していくことが求められる。そして実社会と多くの接点をもつ職業教育ならではの学生の社会的・職業的自立の支援のあり方は、近年、主体的な学習者の育成に問題を抱えている大学教育に対しても示唆を与えるものではないか。

 

卒業後の社会・職業とのつながり方を認識した上で、進路・職業を選択していくことが重要。

今回の調査から、一括りに「専門学校」と言えど、専門分野によって、履修分野と関連する職業への就職・定着率や雇用形態、平均年収に大きな異なりがあることが明らかになった。専門学校への進路を検討している中高生は、専門学校で何が学べ、どのような資格を取得できるかと共に、その先の社会・職業とのつながり方の特徴も踏まえておくことが必要である。そしてその上で、どのような専門性を磨き社会に貢献していくのか、進学後も意識して学習し続けていくことが、職業選択の可能性や活躍の場を広げることにつながるのではないか。そのためにも、各専門分野ごとの特徴にあわせた教育成果の質保証が求められる。

 

非認知スキルなどの学び成果は大学卒業者と遜色ないが、社会に出てからの年収には差がある。

専門学校卒業者と大学卒業者の学びの成果に関する回答を比較したところ、社会的成功や活躍に影響を与えるとされる非認知スキルについて大学卒業者と遜色ない傾向が確認された。実際にどれだけの能力・資質を獲得しているかは、客観的評価を組み合わせながら確認する必要があるが、少なくとも卒業者の実感レベルでは、同等の学びの成果を上げているにもかかわらず、職業人の評価指標の一つである年収面では、大学卒業者と専門学校卒業者の間に約100万円の差があることが明らかになった。
職業教育を通じて若者が何を学び、どのような資質能力を高めているかについて、教育機関だけでなく、産学官で連携しながら専門分野別にその評価体系を構築、教育と労働市場の接続の在り方を含めて検討してくことがますます重要になるのではないか。

 

ベネッセ教育総合研究所では、これからの高等教育における職業教育の在り方について、卒業生がどのように社会へ移行しているか、その実態を踏まえながら引き続き検討していきます。

 

<調査概要>
名称: 専門学校での学びと社会への移行に関するふりかえり調査
調査テーマ:
専門学校での学びと成長に関する意識と、卒業後の社会への移行のあり方の把握
調査方法: インターネット調査
調査時期: 2016年3月
調査対象:
20~49歳の日本の専門学校(専修学校専門課程)を卒業した者
3,771名(20~29歳1,237名 、30~39歳1,269名、40~49歳1,265名)
調査項目:
<学生時代のふりかえり>
専門領域(8分野)/高校での学習状況/進路選択の際に重視した点(入学理由)/入試方法/志望度/行動主体性/教職員とのつながり/専門学校での学習状況/設備、制度の利用状況/学生生活で力を入れたこと/教育に対する印象/教育の経験頻度/学修成果/学びの充実度/成長実感 など
<現在の仕事の状況や考え>
現在の職業/雇用状況/キャリア観/専門学校教育の役立ち度/卒業校への思い/現在の自信/満足度 など
調査企画:
・分析メンバー
小泉和義(ベネッセ教育総合研究所 副所長)
佐藤昭宏(ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室 室長)
松本留奈(ベネッセ教育総合研究所 高等教育研究室 研究員)

ベネッセ教育総合研究所のホームページからも、本リリース資料をダウンロードできます。
また、今後さらに分析を進め、2016年10月ごろに調査結果をまとめたレポートを掲載する予定です。

 

◆本リリースの詳細は、こちら(PDF)をご覧ください。

(株式会社ベネッセホールディングス http://www.benesse-hd.co.jp/ / 8月18日発表・同社プレスリリースより転載)

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