親子就活
[オヤコシュウカツ]
「親子就活」とは、学生の就職活動に保護者が積極的に関わり、親子二人三脚で内定獲得を目指すことをいいます。リーマン・ショック以降の雇用悪化を背景に、わが子の就職に危機感を強める親が急増。企業選びの助言から保護者向け説明会への参加、面接試験の練習相手を買って出るなど、具体的な支援に乗り出す親子就活の動きが活発化してきました。一方で、エントリーシートの“代筆”や、選考結果について企業や大学にクレームを入れるなどの過干渉も見られ、問題視されています
親子就活のケーススタディ
大学の就職説明会に親が押し寄せる時代
企業との接点に“親の影”は即アウト!?
就活生の保護者をターゲットにした書籍や就活サイトが増えるなど、近年、就職活動のトレンドの一つとして「親子就活」が普及しつつあります。そうした中、学生を預かる大学側にも保護者向けの就職説明会に力を入れる動きが。就活を控えた三年生の親はもちろん、一、二年生の親を対象にした説明会を開く大学も増えており、会場はどこも盛況だといいます。大学としては、激しさを増す就職戦線を親子で乗り切りたいという保護者のニーズに対応するだけでなく、自校の就職率を上げるために就活に対する保護者の理解と適切なサポートを得たいというねらいもあるようです。就職率の高さが大学選びの新たな基準になりつつあるためで、各大学は生き残りをかけて「就職サポートの手厚さ」を競い合っています。
例えば石川県金沢市の金沢星稜大学は、地方の私立大学としては異例中の異例といわれる9割超もの就職率を誇りますが、決して偏差値の高い上位校ではありません。同校独自の取り組みとして知られるのが、親も参加する合同会社説明会「親子シューカツ」。昨年に続き、今年2月に開かれた2回目の合同説明会には大手製薬会社など十社が参加し、学生と保護者に向けて事業内容や採用方針をアピールしました。『偏差値37なのに就職率9割の大学』の著作もある同校の堀口英則進路支援センター長は、取り組みの意義について、「保護者のころと就活の状況が違うので、よかれと思った助言が子どもをミスリードしてしまうことがある。まずは今どきの就活を知ってもらいたい」と語っています(北陸中日新聞2014年2月9日)。無関心は論外、一方的な押しつけもよくない。保護者向け説明会は、親子の適切な距離感を学ぶ機会にもなっているようです。
こうした親子就活の風潮について、企業サイドはどう見ているのでしょうか。人材採用コンサルティング大手のディスコが昨年2月、全国の主要企業1,045社の採用担当者を対象に実施した調査によると、「学生の親から直接連絡をもらったことがある」と答えた企業は15.9%に上りました。親が“口を出す”傾向は企業規模が大きくなるほど高くなり、社員1,000人以上の大手では22.6%と2割を超えています。親からの連絡の内容については「入社後の処遇・待遇についての問い合わせ」が28.3%で最も多く、「選考結果についての問い合わせ」が26.5%、「セミナーや選考試験の欠席の連絡」21.1%の順で続いています。また、こうした親の就活への関わり方についての考えをたずねたところ、アドバイスや活動資金援助といったサポートには賛成の声が多い半面、企業探しや企業選び、意思決定は学生本人に任せるべき、との意見が大勢を占めました。
回答した採用担当者からは「どんなに優秀に見える学生でも、親がしゃしゃり出た時点でアウト」(自動車・輸送用機器)「親による過剰な干渉は入社後においてモンスターペアレント問題を抱えることになりかねませんので、親の影がチラついた段階で全て落としています」(水産・食品)といったコメントも寄せられており、保護者の行き過ぎた関与が採用においてマイナスにしか働かないのは明らかといえます。親という以上に、社会人の先輩としての経験を学生に語り、仕事への心構えやビジネスのしくみなどについて助言してもらいたい――それが企業側の親に対する基本的なスタンスかもしれません。