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コンピテンシー
[コンピテンシー]

「コンピテンシー(competency)」とは、高い業績を挙げている人材に見られる行動や思考、判断基準などの特性を指します。1970年代のアメリカで萌芽した概念であり、日本ではバブル経済が崩壊した1990年代ごろに急速な導入が進みました。今日では一般的な用語として定着しているものの、コンピテンシーをきっかけに広がった人物重視の姿勢は、企業の人事制度に受け継がれています。

コンピテンシーとは

コンピテンシーは、「戦う」の意味を持つ動詞「compete」から派生し、「戦えること」から転じて「能力」「技能」「適性」など、さまざまな意味を持つようになりました。ビジネスにおけるコンピテンシーの定義も多岐にわたりますが、総じて「成果につながる能力」だと言えます。

コンピテンシーには「特定の職務に関連する」「高い業績や成果に結びつく」「行動の形で現れる」「個人の潜在的な特性が影響している」といった要素が含まれます。実際のビジネスの現場では、高い成果を出した従業員の行動や思考をコンピテンシーと呼び、人事評価への適用や業績の向上を図るために用いられます。

日本でコンピテンシーの概念を広めたビジネス・ブレークスルー大学大学院教授の川上真史氏は、「コンピテンシー的な人材」の特徴として以下の三点を挙げています。

  • 今、生み出すべき成果は何であるかを、明確にイメージできる
  • 今、自分を取り巻く環境はどのような状況かを、客観的に把握している
  • 今、自分が使える能力的な資源は何であるかを、幅広く確認している

日本では、行動特性のみを取り上げてコンピテンシーとする企業が多く見られますが、これは本来のコンピテンシーとは異なります。高い業績を挙げられるのは、その場の状況に合わせて柔軟に動くことができる人材です。ある局面で高い業績を挙げた行動に固執することなく、別の条件下に置かれた場合には異なった行動を取ります。コンピテンシーは目に見える行動だけではなく、目には見えない思考や価値観に着目する必要があるのです。

概念の基礎となる氷山モデル

※書籍『コンピテンシー・マネジメントの展開』p.14の図より作成

コンピテンシーを理解するためによく用いられるのが、スペンサー夫妻が作成した「氷山モデル」です。このモデルでは一人の人間を氷山とみなし、水面より上は知識・技能などの顕在化しているハードスキルを、水面より下は自己概念や価値観といった潜在的なソフトスキルを表します。

「目に見える成果は氷山の一角であり、成果を生み出すためには水面下の自己概念や価値観が重要だ」という考え方です。氷山モデルは、人事制度を構築するためのコンピテンシー理論の基礎となっています。

一般的に、水面より上のハードスキルは後天的に育てることができるのに対し、水面より下のソフトスキルは育成が難しいとされています。潜在的な部分については採用時に注意深く見極め、配置を行う上でも考慮に入れる必要があります。

コンピテンシーの歴史・背景

コンピテンシーの概念が生まれたのは1970年代のアメリカです。ハーバード大学の心理学教授であるマクレランドは、アメリカ国務省の委託を受け、学歴や知能が同一レベルにある外務情報職員が在任中に挙げる業績に大きな差が生じる要因について調査しました。

その結果、業績には学歴や知能はそれほど関係がなく、高い業績を挙げる外務情報職員は「異文化における対人感受性が強い」「他人に前向きな期待を抱く」「政治的ネットワークを学ぶスピードが速い」といった特性を持っていることが判明。マクレランドの発見により、心理学においてコンピテンシーが盛んに研究されるようになりました。

民間企業においても、従来の職務記述書の補完ツールとしてコンピテンシーがさかんに使われるようになりました。アメリカでは、担当する職務内容や責任の範囲などを記した職務記述書に基づいた人事制度が定着していましたが、従業員が決められた仕事しか行わないこと、変化に対応できないことなどが問題視されていました。そこで、思考や価値観を含めた個人の能力を明確化し、評価できるコンピテンシーが注目されるようになったのです。

一方、日本では1990年代ごろからコンピテンシーを導入する企業が増加しました。その背景には、バブル経済の崩壊があります。戦後の日本では、年功序列の賃金制度が採用されていました。年功序列は、勤続年数や年齢の上昇に従い、職能も上昇することが前提となっています。しかし、実際には能力が賃金に比例しないケースがしばしば発生し、企業は人件費の高騰に頭を悩ませていたのです。

バブル期の終焉により、多くの企業が年功序列の賃金制度の維持に限界を感じたことで、それまでの能力重視から成果重視へとパラダイムシフトが起こりました。そこで、個人の能力という職能主義の根幹を残しながら成果主義を進めることができるものとして、コンピテンシーが取り入れられたのです。このとき、成果主義を導入したいとの思いから顕在能力に力点が置かれ、目に見える「行動」のみがコンピテンシーであるとの誤解が生まれ、今日にいたります。

アメリカのコンピテンシーブームとその後

スペンサー夫妻によるコンピテンシーの作成・運用方法が書かれた書籍の出版を契機に、1990年代のアメリカではコンピテンシーの一大ブームが巻き起こりました。ところがほどなくして、「コンピテンシーを抽出し、モデル化するのは大変」「コンピテンシーは状況に合わせて修正する必要があり、その度に報酬制度も変わる」「報酬を決める基準として使いづらい」といったコンピテンシーの問題点も指摘されるようになりました。

2000年代に入るとブームは落ち着き、コンピテンシーは人事制度の一般的な用語として定着。目新しさを持って取り入れられることは少なくなりました。ただ、コンピテンシーをきっかけに広がった人物重視の流れは今も衰えることはありません。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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