新卒採用スケジュール【21・22卒】
新卒採用は、採用業務の中でも長期的な視点で取り組むことが求められる。1〜2年サイクルで計画を立て、準備を進めていくことが必要だ。
また新卒採用は、各社が一斉に採用活動を行うことが特徴である。全体のスケジュール感を踏まえた上で、戦略的に広報・採用活動を進め、人材を確保していくことが求められる。
2021年卒の採用スケジュール
2021年卒の採用活動は、日本経済団体連合会(経団連)が「採用選考に関する指針」の策定を廃止してから初めてのものだった。経団連の代わりに政府が主導してスケジュールを策定した。
要請されたスケジュールは例年と変わらないものの、オリンピックや新型コロナウイルス感染拡大の影響があったのが2021年卒の採用である。対応としては、オリンピックというイベントを見据えて選考を前倒しした企業と、新型コロナウイルス感染症への緊急対応で選考を後ろ倒しした企業に分かれた。
例年同様に広報開始が3月、選考開始は6月が目安
具体的な採用日程は、政府主導の「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」で取りまとめられた。会議で要請された具体的なスケジュールは以下の通りである。
- 広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
引用元:就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議(2020)「2021年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」
このスケジュールは2020年卒の「採用選考に関する指針」と同じであり、結論として変更を見送っている。中小企業などや大学側から、スケジュール変更による企業・学生の負担感増への懸念が示されたこととも関係が深い。
オリンピックを想定し、採用活動を早める企業も
とはいえ、2021年卒の採用活動では、スケジュールの変更を余儀なくされた企業が多かった。オリンピックの開催時期と選考時期が重なってしまう恐れがあったからだ。
株式会社ディスコのキャリタスリサーチは、「2021年卒・新卒採用に関する企業調査―中間調査(2020年7月調査)」で全国の有力企業を対象に採用見込みを尋ねた。これによると、2021年卒の面接を始めた時期としては3月中旬が最多だった。前年に比べて2週間程度早まっている。1月以前に面接を開始した企業も8.6%と、前年より3.9%増えた。
また、株式会社学情が全国2,270社・団体からのアンケート調査をまとめた「2021年卒業予定者 採用動向調査レポート」(調査期間:2020年1月6〜31日)によると、2月以前に企業セミナーを開催する企業が49.3%となっている。2020年卒に比べると6.1ポイントの増加となった。
どちらの調査結果からも、前年よりスケジュールを早めている企業が多いことがわかる。
参考:
2021年卒・新卒採用に関する企業調査-中間調査|株式会社ディスコ キャリタスリサーチ
2021年卒業予定者 採用動向調査レポート|株式会社学情
新型コロナの影響でスケジュール・選考方法の変更を余儀なくされた
そのほか、2021年卒の新卒採用は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて変更を余儀なくされた。
新型コロナの影響を受け、選考が後ろ倒しになる企業も
株式会社マイナビが全国1,060社に対して行った「2021年卒 企業新卒採用予定調査」(調査期間:2020年2月13日〜3月6日)では、新型コロナの影響を見るため、2月回答・3月以降の回答にそれぞれ分けて結果を分析している。
同調査によれば、3月に回答があった企業は選考フェーズが後ろ倒しになっている。新型コロナ拡大の影響を受け、特に面接など対面で行う予定だった選考を後ろ倒しにする傾向が見られたとのこと。一方、新型コロナの影響があまりなかった2月回答の企業の場合は、ディスコや学情の調査と同様、採用活動を前倒しにする傾向があった。
参考:
2021年卒 企業新卒採用予定調査|株式会社マイナビ
面接方法にも影響
選考フェーズの後ろ倒しとともに、面接など選考の方法を変更した企業も多かった。株式会社ジェイックが学生を相手に調査した「2020年8月実施 Web面接に関する21卒学生アンケート」(調査期間:2020年8月1〜3日)によると、面接を「ほとんどWebで行っている」「Webの方が多い」と回答した学生が62.4%を占めた。
新型コロナの影響で対面での面接が難しくなり、代替手段としてWeb面接を取り入れた企業が多いと考えられる。
2022年卒の採用スケジュール
続いて、2022年卒の採用スケジュールについても確認する。最新情報は、次章に示した機関(政府や産学協議会など)の発表を参照してほしい。
3月採用情報解禁・6月選考開始は21年卒と同様
2022年卒の就職・採用活動スケジュールは、2020年中に開催される予定の「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」で決定される。
政府としては、これまでと同様、今年度末を目途に、経済団体等に対して、2022年度卒業・修了予定者の就職・採用活動に関する要請を行う。
その際、就職・採用活動日程については、2021 年度卒業・修了予定者の就職・採用活動と同様に、以下の日程を遵守するよう要請する。なお、インターンシップの取扱い、学事日程等への配慮などその他の論点を含む要請内容の詳細については、経済界や大学側とも対話しながら、関係省庁において引き続き検討を行う。経済団体等への要請、就職・採用活動日程のルールの広報についても、関係省庁において引き続き取り組む。
- 広報活動開始 :卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日 :卒業・修了年度の 10 月1日以降
引用元:就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議(2020)「2022年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」
この会議の内容を踏まえると、2022年卒は例年通りの採用スケジュール(3月情報解禁・6月選考開始)だと考えていいだろう。
新型コロナの影響やオリンピック関係でスケジュールは不透明
2022年卒は例年通りの採用スケジュールが提言されているが、注意しなければならないことが2点ある。それが、新型コロナの影響やオリンピックの開催だ。
新型コロナは、2021年卒の採用活動にも大きな影響を及ぼした。説明会・面接など対面で行っていたものを、Webで代替した企業も多い。新型コロナの影響は数年続くであろう。そのため、選考活動の遅延やWebの活用などを視野に入れながら、余裕を持ったスケジュールを組む必要がある。
また、2021年にはオリンピックが開催される可能性がある。2020年10月現在、2021年7月23日から8月8日に予定されている。オリンピックと選考期間が重ならないよう、配慮することが必要な企業もあるだろう。
スケジュール策定のために注視しておきたい発表
新卒採用のスケジュールを策定するために注視する必要がある発表・報告を二つ紹介する。
就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議(内閣府)
経団連の指針が廃止されてから、政府が主導となり新卒採用のスケジュールを提言している。毎年10月中には次年度のスケジュールが発表される。
採用と大学教育の未来に関する産学協議会(経団連・大学)
経団連は指針の策定を廃止したものの、国公私立大の代表者と「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」を開き、長期的な視点で新卒採用のあり方・大学教育のあり方を議論している。
協議会が政府に要望を出して日程が決定する可能性もあるため、協議会の動向にも注目しておくとよいだろう。協議会は新卒採用について、長期的には通年採用も視野に入れていくとしている。
中長期的には、人種、国籍、年齢層など、学生構成のさらなる多様化に対応して、大学の入学・卒業時期もさらに多様化させることが望ましい。これにあわせて企業側も通年入社を拡大していく。
引用元:採用と大学教育の未来に関する産学協議会(2020)「Society 5.0 に向けた大学教育と採用に関する考え方」
今後協議会の審議によっては、採用スケジュールが大きく変わる可能性もある。ここでは、最新の報告書である「Society 5.0 に向けた大学教育と採用に関する考え方」を参考資料として示しておきたい。
新卒採用実務の進め方・注意点【21年卒・22年卒対応】
最後に、新卒採用業務の進め方について確認する。新卒採用業務は、入社の2年前から計画的に進めていく必要があるため、大まかな流れをつかんで行動していくことが大切だ。
ここでは、採用実務を四つの段階に分けた。この流れを参考に自社がどのフェーズにいるのかを確認してほしい。
1)計画
- 人員計画
- 採用計画
- 求める人材像と採用目標数の決定
- 採用市場・動向の分析
計画は、2年前から行うのが理想である。まずは人員計画に基づいて、新卒を何人採用するかを検討する。具体的な人数が決まったら、求める人物像を決める。人物像は可能な限り、具体化しておくとよい。
- 入社1年以内に単独で海外進出可能。TOEIC700点または英検準1級以上。
- Webテストにおいて70%以上の正答率。面接において結論から論理的・簡潔に答えられている。
人員計画や採用計画がこの時期に立てられない場合でも、採用市場や動向については最低限リサーチしておくとよいだろう。事前に調査しておくことで、採用計画や活動準備がスムーズに行うことができる。
2)活動準備
- 採用戦略立案
- 母集団形成戦略
- 選考・選抜戦略
- メディア戦略
- アピールポイント戦略
- 選考プロセス・選考内容・項目決定
- 評価基準・標準質問の決定
計画が立ったら、実際に準備を進めていく。目安として、入社2年前の6月ごろには準備に入りたい。前年の振り返りや今年度の募集要件の決定など、行わなければならないことは多い。抜け漏れのないように実行することが重要だ。初めての場合には、多くの事例を持つコンサルティング会社や採用代行会社などを利用するのもいいだろう。
忘れてしまいがちなのが、面接担当者のトレーニングだ。面接の評価基準や標準質問が決まった段階で、担当者への研修を実施する。また、Web面接を行うことに備えて、実際にツールを使用して担当者同士で模擬面接を行うのもいいだろう。Web面接は録画できるので、振り返りを行って本番に生かしたい。
3)説明会〜選考
- メディア出稿
- ツール作成
- セミナー動員
- セミナー運営
- 選考(面接、適性検査)
大手就職サイトの採用情報が解禁となる1年前には、学生との接触が増えてくる。計画に沿ってメディアで広報し、セミナーに向けて学生を集める。セミナー会場は、これまでの実績に基づいて手配するのがよい。
Webで説明会を実施する場合には、テスト配信を何度か実施し、スマートフォンの回線でも滞りなく説明会に参加できるか確認しておく。また、説明会の資料を終了後にPDFなどで配布すると、学生が振り返りを行いやすい。
選考を始める時期は、会社によってまちまちである。ベンチャーや外資では1月ごろから選考を行う場合もある。面接や説明会のアンケートなどで他社の選考状況を聞いても焦らず、計画通りに実施していくことが大切だ。学生の質を担保するためにも、焦らずじっくり選考を行うとよい。
4)内定〜入社前
- 内定
- 受け入れ体制準備
- インターン・内定者研修
- 採用活動の検証
- 入社
内定は、5〜6月に出すことが多い。この時点で内定を出す場合には、その後のフォローが大切になる。可能な限り会社とのつながりが持てるよう、インターンや内定者教育・会社見学を実施する必要がある。内定を受諾してくれたとはいえ、実際の内定式までは気を抜いてはならない。
また、選考が落ち着いた段階で今年度の採用活動の振り返りを行う。毎年採用を行う場合には、次年度の計画を立てる必要があるからだ。記憶の新しいうちにデータを取りまとめておき、次年度の計画に役立てる。