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2015年卒における新卒採用トレンド ~大手就職サイト5社インタビュー~

景気回復の手ごたえとともに、企業の採用意欲も高まりを見せ始めた2014年度新卒戦線。特に、中堅・中小企業では採用活動が活発になり、学生獲得のための競争が激化している。
今回、5名の大手転職サイト責任者がそんな2014年度新卒採用を総括。更なる変化が予想される今年度以降の採用の指針を示してもらった。

株式会社マイナビ 就職情報事業本部 事業推進部 粟井俊介部長 中堅・中小企業の新卒採用意欲が回復。
激しい競争を勝ち抜くためのキーワードは「差別化」

株式会社マイナビ 就職情報事業本部 事業推進部 粟井俊介部長

2014年卒の新卒採用を振り返ってみると、企業の採用意欲は回復基調にありました。この数年のデータを見ると、新卒採用が底を打ったのは2011年の春ごろ、つまり2012年卒の採用でした。リーマン・ショック後の落ち込みからは完全に脱し、堅調に回復しつつあります。リーマン前との違いとは、一社当たりの採用人数が増加するよりも、新卒採用を新たに取り組む企業が急増していることです。特に、これまで中途採用のみで対応していた企業が新たに新卒採用を開始するケースも非常に多く、中でも目立ったのは、中堅・中小企業です。

よく「中堅・中小企業が大手企業に学生を持っていかれ苦戦する」と言われますが、それはある面では正しく、ある面では間違いです。従業員数1000名以上の大手企業に対するエントリーは全体の3割程度に過ぎず、残り7割は1000名未満の中堅・中小企業にエントリーされていることがわかっています。すべての学生が大手企業ばかりを志向しているわけではなく、はじめから大手企業を避けて企業を探す学生も多数いるというのが実情なのです。また先ほどのデータからもわかるように、実際には新卒採用市場で戦っている企業の大多数は中堅・中小企業であり、その約7割のエントリーを取り合う構図となります。この層の企業数が急激に増加しているため「競争がより激しくなっている」と言えるわけです。

このような環境において、学生が志向する業界や仕事内容などの大きな方向性をイメージしながら企業を探すということを考えると、採用活動上のライバルとすべきは同業界、もしくは関連業界の同規模企業と捉えることができます。

似たタイプの人材を求めている企業などを採用競合と考え、他とは違う自社の魅力をどう打ち出していくかを明確にするための「採用競合との差異化」。

学生の学部や専攻はもとより、地域や就業観などのバックグラウンドや選考段階などを意識した「学生の志向や段階にあわせた情報提供」。

普段現場で仕事に携わる立場として、人事担当者だけでは伝えきれない企業の魅力・仕事の魅力を伝えられる存在としての「協力社員の育成」。

以上を踏まえ、明確な自社の事業内容や戦略、詳しい仕事内容などの訴求ポイントを持ち、きめ細かな採用活動を行っていけば、どの企業にも勝機が十分にあると思います。
(取材日 2014/1/7)

基本的には、2014年卒の採用戦線に近い形が続くだろうと考えています。2014年卒の傾向を簡単に振り返りますと、内定率は国公立・私立、または文系・理系の区別なく、全体的に上昇しました。しかし、細かく見ていくと若干のまだら模様もあります。国公立で、特に理系の学生は積極的に採用されたのに対して、文系の学生は、夏・秋以降も就職活動を継続するケースが少なくありませんでした。10月から12月にかけて「就職博」をはじめとする合同会社説明会の動員が順調だったのも、そういった状況の反映だと思います。早い段階で採用される学生と長期戦を強いられる学生の二極化が進んだということであり、内定率は上がっても、企業の厳選採用はまだ続いていると言えるでしょう。

景気回復を見込んだ大手企業が優秀な人材を確保するために、学生に向けた情報発信を強化したことで、多くの学生が大手から中堅・中小企業へと志望をシフトするまでに時間がかかってしまったのです。当然、採用する側の中堅・中小企業も、夏から秋、さらには冬へとロングスパンで対応する必要に迫られました。

2015年卒の3月現在でのエントリー状況を見ても、やはり大手志向が目立っています。中堅・中小企業にとって採用活動の本番は、今年もゴールデンウィーク以降になりそうです。

ゴールデンウィーク明けには多くの中堅・中小企業が一斉に動く上、大手企業の採用がまだ続いている可能性もあります。競合の大変激しい時期なので、この時期だけで勝負を決めるのは難しいと考えておいた方がいいでしょう。

採用に成功している中堅・中小企業の多くは、ゴールデンウィーク明けだけでなく、夏、秋、さらには冬にかけてもセミナーなどを定期的に行い、就職活動の進捗とともに志望内容が徐々に変化し、改めて動き出す学生を都度受け入れるための入り口を多段階に渡って設けています。実際に、弊社の就職サイトの登録状況や合同会社説明会への参加状況を分析しても、夏から秋にかけて学生の新規エントリーは着実に続いていることがわかります。秋に開催した「就職博」でも、参加者の大半が初めて合同会社説明会に参加した学生だったというデータも出ています。

つまり、就職サイトだけで多くの学生を一気に集めるよりも長期スパンで、「就職サイト+合同会社説明会」「就職サイト+インターン」など、学生一人ひとりにきめ細かく対応するやり方のほうが、中堅・中小企業には向いているのではないかと思います。夏、秋以降にも十分にチャンスはあるのです。
(取材日 2014/2/28)

2月に採用情報が解禁になる現行のスケジュールは、今年で3年目です。そのため、企業も学生も、この2年間で起きたことを踏まえた“臨戦態勢”が一層整っているように感じます。

まず企業側ですが、2014年卒では短期化した採用スケジュールの2年目、景気も回復の兆しが見えていたため、前年より採用活動を強化する企業が多く、新たな試みに取り組みたいというご相談が多くありました。どうすれば説明会の歩留まりが上がるのか、限られた時間をどの人材に使うべきか、その見極めはどうすればいいのか。この「採用効率」と「質」のバランスに関する問題は、2015年卒採用でも、引き続き多くの企業が関心を持っていると実感しています。

また、2016年卒でさらなる就職採用スケジュール変更を控えており、これまでの手法が通用しないのでは?という不安から、2015年卒でしっかり採用したいという気持ちを一段と高めている経営者・採用担当者も少なくありません。採用競争もいちだんと厳しくなることが予測され、採用戦略そのものを見なおす企業が増えています。今まで採用していなかった大学、学部、地域なども対象にする、一種のブルーオーシャン戦略を掲げているところも多くあります。従来ターゲットにしていた学生だけを狙っていても必要な人材をまかなえないという見方が共通認識になってきたため、こうした提案が社内的にも通りやすくなっているのでしょう。

一方の学生側は、12月スタートというスケジュールを経験した先輩たちがすでに2学年にわたって存在していることもあり、比較的落ち着いて動いているように感じます。単純に学生の意識が緩んだというよりは、「就活を始めるのは12月から」という感覚が浸透したゆえではないかと見ています。その証拠に12月の「リクナビ」オープン後のアクション数は、昨年よりもむしろ増えています。景気回復で大手企業が採用数を拡大、かなり積極的に学生にアプローチをしています。大手の会社説明会総数はおそらくこの5年で最大級でしょう。そうした動きを受けて、学生の足は大手企業を中心に向いているようです。

いずれにしても、2016年卒が対象となる来年はスケジュールが変わり、企業も学生ももう一度手探り状態から始めることになるでしょう。そのため、採用市場全体に「現行スケジュール最後の今年は失敗できない」という気持ちが働いているように感じます。
(取材日 2014/1/8)

まずは、前年の2014年卒の動きがどうだったかを振り返ることから始めましょう。端的に言えば、企業も学生も「二極化」がよりはっきりした年だったと思います。情報への感度が高い学生は12月の情報解禁前から活発に活動していて、大手企業から早々に内定を得ていたようです。景気の回復によって、金融機関をはじめとする大手企業が積極的に採用活動を行ったこともあって、全体的な内定率は高くなりました。それに対して中堅・中小・ベンチャー企業では、欲しい学生を計画通りに採用することが難しかったのではないでしょうか。

中堅・中小・ベンチャー企業が苦戦した要因の一つは、「ブラック企業」が流行語のようになり、世間の関心が高まったことが挙げられると思います。もともとブラック企業に明確な定義はありませんが、ネット上に他社の噂話が流れると、規模や業界が近いというだけで、不人気になってしまう企業もあります。ブランド力のない中堅・中小・ベンチャー企業、あるいは外食業界、介護業界などがそのあおりを最も受けているのではないでしょうか。2015年卒の採用市場は、アベノミクス効果もあり、大手企業は積極的に採用活動を行い、一方の学生側では大手志向がさらに強まると考えられます。そのため、中堅・中小・ベンチャー企業にとっては、厳しい採用戦線が続くと考えられます。

弊社では、採用力の定義を「企業力×採用活動」と考えています。企業力自体はそう簡単に変えられるものではありませんが、「学生にとっての自社の魅力」をうまく伝えることができれば、競合他社に十分に対抗することができます。また、採用活動においては、自社の魅力に共感してくれるターゲットをきちんと絞り込み、学生一人ひとりとコミュニケーションしていかなければなりません。つまり、「いかに伝えるか」が重要なのです。今の学生は多様化していますので、ひとつのメッセージで全体をカバーすることはできません。相手にあわせ、1対1の感覚でお互いに理解しあうことを目指すべきでしょう。

その上で今年注意したいのは、「情報開示」です。学生のブラック企業への警戒は強く、自社に都合のいい情報だけを公開しているようでは、学生からの信頼を得ることはできません。今の学生は日常生活でSNSなどを使いこなしていますので、情報の裏側にあるものを見抜く力がとても発達しています。都合の悪い事実があれば、一気に広がってしまうと考えるべきです。入社後のミスマッチ、早期離職などを防ぐ観点からも、職場の姿を学生に正しく理解してもらうことは、とても大切だと思います。
(取材日 2014/1/9)

就職サイトのオープンが12月、選考開始が4月という現在のようなスケジュールになったことで、大きく二つの傾向が生じました。一つは「面接から内定出しまでの短期化」です。4月1日に面接・選考がスタートして、早い企業は10日前後にもう内定を出していました。大手に関していえば、4月中旬には大勢が決していたと言っていいでしょう。

短期間で一気に結果が出るため、学生は大変だったでしょうが、近年問題視されていた「就活の長期化」に歯止めをかける効果はあったと思います。また、大手が4月中にほぼ決定したことで、学生が中堅・中小企業に志望を切り替える時期が前倒しされ、全体の内定率は上昇しました。中堅・中小企業にとっては、採用のチャンスが拡大していると言えるのかもしれません。

採用成功のため、中小・中堅企業の間では様々な工夫をしているところも見られるようになりました。昨年あたりからトレンドとなっているのが、「企業が各大学で開催する説明会」です。大手企業が上位校で行うだけではなく、中堅・中小企業が自社にOB・OGがいるような大学で開催するケースも増えています。今後しばらくは、マスに対してアピールする就職サイトと、大学内説明会のようなターゲットを狙い撃ちにする手法を並行して利用し、それぞれを補完しあっていくような採用スタイルをとる企業が増えるのではないでしょうか。

また、「面接担当者のトレーニング」を行う企業も増えています。ありきたりな面接を続けているようでは学生の本音や本当のポテンシャルを見抜くことはできません。企業によっては面接ではなく、「候補者と一緒に一日野外でバーベキューをする」「登山をする」といったイベントで人柄などを見極めようとしているところもあります。「最近の学生は、面接でマニュアル通りの受け答えしかしない」と嘆くのではなく、企業側にも工夫が求められていると思います。

ただ、2015年卒採用に関しては、若干見通せない要素もあります。経団連は2016年卒採用から、選考開始をさらに繰り下げて8月からにすると決定していますが、その影響が何らかの形で出てくるかもしれないからです。来年何が起こるかわからないという危機意識から2015年卒では厳選採用をやや緩和し、必要数を確保するという数を重視する採用に変える大手企業が増えれば、採用戦線の様相も変わってくるでしょう。つまり、優秀な学生が従来以上に残らないかもしれないということです。迅速に対応した企業が有利になることは、言うまでもありません。
(取材日 2013/12/11)

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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