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2013年卒における新卒採用トレンド ~大手就職サイト5社インタビュー~

日本経済団体連合会の倫理憲章により、採用の広報が例年より遅い12月となった2013年卒の新卒採用。これまでの採用計画の大幅な見直しを迫られ、これまでの採用ノウハウが通用しないという大きな課題に直面している。そんな激動の2013年卒新卒採用について、5名の大手就職サイト責任者にきいた。それぞれの分析から「2013年卒における新卒採用トレンド」を読みとっていただければ幸いである。

株式会社マイナビ 就職情報事業本部 事業推進部 営業推進課・粟井俊介課長 情報の見せ方で採用の成否が決まる。
就職サイト12月オープンの影響

株式会社マイナビ 就職情報事業本部 事業推進部 営業推進課・粟井俊介課長

前年までと大きく違うのは、就職サイトのオープンが12月になったことです。しかし、大手企業を中心に内定出しのピークは、例年同様4月になりそうです。2012年卒は、震災の影響で各社の採用スケジュールは分散化しましたが、選考を遅らせた企業より当初の予定通り4月から選考を行った企業の満足度の方が高かったという調査結果があります。そのため多くの企業が、良い人材を「質・量」ともに確保するには、競合他社に遅れをとってはならないという教訓を得たはずで、例年通りの選考スケジュールとなるのではないでしょうか。もちろん、選考にはある一定の母集団は必要です。例年より短い期間で十分な母集団形成が可能かどうか、まずこれが企業にとっては課題になります。

選考開始までが短期化する影響を大きく受けるのは、一般的な知名度が高くない企業や中堅・中小企業でしょう。学生の大手志向は続いていますので、企業説明会の日程が重複した場合、大手企業や人気企業に学生が流れることは十分予想されます。従って一部の大手企業以外は、十分な内定者を確保できず、夏、秋…と採用活動を継続することになりそうです。選考開始までは「短期化」ですが、新卒採用全体を見た場合にはむしろ「長期化」が2013年卒のトレンドではないでしょうか。

一方、学生の動きは就職サイトオープン前の段階では、思った以上にゆっくりしているようです。当然、企業研究も進んでいないので、限られた期間で最適なマッチングを実現するには、自社の特色や魅力を学生にわかりやすく伝える、「情報の見せ方」がより重要になります。特に、「情報の見せ方」によって新卒採用の成否を大きく左右されるのが中堅・中小企業でしょう。中堅・中小企業に目が向いてきたはといわれていますが、一方で新たに新卒採用に取り組む中堅・中小企業の数は年々増加し続けています。大手企業だけでなく中堅・中小企業も採用競合と考え、他社との差異化をしっかり図っていく必要があります。

ただ、採用活動が長期化すれば、それだけ採用コストや担当者の負担は大きくなります。日本人留学生や地方大学の学生など、エントリーがあっても実際には接触できていなかった学生との交流も積極的に行うなどの施策も含めて、採用活動を効率化する工夫も大切になってくるでしょう。
(取材日 2011/10/19)

株式会社学情 企画部 就職事業担当・乾真一朗マネージャー 「B to C」の有名企業以外は長期化必至。
求められる効率的な採用活動

株式会社学情 企画部 就職事業担当・乾真一朗マネージャー

2013年度卒業見込みの学生の動きは、全体に遅いといわれています。例年9月頃から本格化する企業主催のイベントも少なく、10月の段階では大学内のガイダンスが一通り終わったぐらいでしょうか。就職サイトのオープンが12月になったことで、すべてがゆっくりスタートしている印象ですが、インターンシップが5日以上となって参加者が減ったことなどともあわせて、本格的な就職活動を開始する前の「学生が成長する機会」が失われているのは、やや気になるところです。

就職サイトオープンから選考開始までが4カ月しかないことも、学生の企業研究のチャンスが減ることを意味します。近年の学生は、まず知名度・人気ともに高い「B to C」の大手企業にエントリーし、次に「B to B」の大手、中堅・中小の優良企業へ…と徐々に活動対象を広げていくのが基本的パターンですが、選考開始までが短期化すると、「B to C」の人気企業以外は必要な母集団がそろわない状態で4月を迎えることになります。「B to B」の企業や中堅・中小企業も採用意欲は高いだけに、あらかじめピークをゴールデンウィーク明け、さらには夏・秋にもってくるような採用スケジュールを考えることも有効だと思います。

採用が長期化すると、例年ならその年の総括を行い、次年度の計画を立ててインターンを受け入れるような時期にも、採用活動を並行で行わなくてはなりません。これはマンパワーの少ない中堅・中小にとっては特に負担でしょう。そこで、重要なのが採用活動の効率化です。実は、2014年度新卒採用は、13年度とはさらに異なる日程になる可能性もあり流動的です。逆にいえば、今年は変則的なスケジュールにも柔軟に対応できる新卒採用のノウハウを蓄積する好機といえるかもしれません。

夏以降になると学生も、「どの企業が継続募集しているのか分かりにくい」という悩みを抱えています。すでに内定を出し終わっている企業もネット上の募集告知はそのままにしているケースが多いからです。春のピーク以降に効率よく母集団を形成するには、募集企業が目の前に見える合同企業説明会などのイベントを併用するのも有効でしょう。また、中堅・中小企業を志向する学生と地元志向の学生はかなり重複するというデータもあります。より掘り下げたターゲット設定や告知手法の選択も採用効率化の有効な手段だと思います。
(取材日 2011/10/24)

株式会社リクルート HRカンパニー・岡崎仁美リクナビ編集長 企業も学生も二極化が進展。
学生の本質を見きわめる工夫がより重要に

株式会社リクルート HRカンパニー・岡崎仁美リクナビ編集長

この数年のトレンドは、企業規模を問わず「質重視・厳選採用」の考え方が定着したことです。ビジネス環境のさらなるグローバル化の中で、優秀な人材であれば国籍にはこだわらず新卒として採用する動きや、第二新卒・既卒者も含めて新卒採用を捉えなおす通年採用の動きも出てきています。伝統的な日本の新卒採用が大きく変わる、まさにパラダイムシフトが始まりつつある時代といえるでしょう。

こうしたバックグラウンドの中で2013年度新卒採用の傾向を分析すると、やはり就職サイトのオープンを含めて、就職/採用活動が12月開始となることの影響は大きく、企業側も学生側も「二極化」がより進む年になりそうです。

まず、企業に影響が出るのが母集団形成です。短期化によって企業説明会の日程などが過密化し、「B to B」の企業や中堅・中小企業など、知名度を含めた採用力が比較的弱い企業は、エントリーを集める段階で苦戦しそうです。またエントリーはうまく集まったとしても、その後の説明会や面接への集客の日程が、他社と被るケースも増えるでしょうから、内定までの歩留まりが懸念されます。例年どおりに、GWまでに採用活動を収束できるのは大手・人気企業だけで、それ以外の企業の多くが採用活動の長期化を余儀なくされるのではないでしょうか。これが企業側の「二極化」です。

一方の学生にとっても、就職活動を通して学生から社会人へと脱皮する「成長の機会」が、短期化によって確実に減ります。そうなると、以前から自分の将来について深く考えたり、社会との接点を豊富に持ったりしてきた学生は、自分の「キャリア観」に基づき、行動することができますが、将来のことも社会のことも、これまであまり考えずに来てしまったタイプの学生は、例年以上に「動き始めてから考える」手法が通用しづらくなります。複数の内定を得るような学生となかなか内定が得られない学生との「二極化」もまた進むことが予想されます。このトレンドについては、企業側もしっかり認識しておかないと、「今年の学生はなんとなく手応えがない」ということになって、内定を出せる数が大きく減ってしまう可能性があります。面接・選考時に、今は未成熟でも経験を積むことで伸びる…という人材を見きわめる工夫が必要です。

対策としては数を集めるよりも本当に自社にあう人材とコンタクトをとる採用戦略が必要となります。提供する情報の吟味も重要ですし、WEBによるオンラインセミナーの活用など、参加の敷居を下げ、企業側も特別な負担なく行える採用手法の導入も有効だと考えています。
(取材日 2011/10/25)

エン・ジャパン株式会社 新卒採用支援事業部・小川泰正事業部長 学生の約6割は中堅・中小・ベンチャー企業にも
関心を持っている

エン・ジャパン株式会社 新卒採用支援事業部・小川泰正事業部長

この数年、学生の大手・有名・安定志向が根強く、中堅・中小・ベンチャー企業は苦戦が続いています。有効求人倍率を見ても、従業員数5000名以上の大手企業では0.5倍なのに対して、同300名未満の中小企業では約3倍強という大きな開きがあることからも明らかでしょう。この傾向は2013年度新卒採用でも続くと見ています。

ただ、学生のすべてが大手志向なのかといえば、実はそうでもないのです。2012年度卒の就職活動学生の約6割は、「中堅・中小・ベンチャー企業にも関心があった」という回答データもあります。
2013年度に関しては就職サイトのオープンも含めて就職・採用活動が12月開始となり、学生が業界研究や志望企業の絞り込みを行う期間が例年より2ヵ月短くなります。そのため、企業規模にこだわらず、中堅・中小・ベンチャー企業にも早い段階から目を向ける学生は増えるのではないかと思います。大手中心に就職活動を行ってきて、苦労している先輩を見てきているわけですから。

また、学生は中堅・中小・ベンチャー企業に対しては「事業の独自性が高い」「若い時から責任ある仕事を任せてもらえる」「仕事を通じた知識・スキルの習得、人間的成長ができる」といったイメージを抱いている一方で、「売上や利益が安定的ではない」「採用に関する情報量が少ない」といったマイナスのイメージも持っているようです。つまり、大手企業と比較すると知名度が低い中堅・中小・ベンチャー企業であっても、他社とは違うところ、自社ならではの特色や魅力をわかりやすく伝えることができれば、より多くの学生が選択肢に入れるようになる可能性は高いのです。

中堅・中小・ベンチャー企業にとっては、これまで以上に情報の出し方を工夫し、企業規模にはこだわらずに就職活動を行う学生に自社の魅力をより具体的に伝えていくことが重要な、2013年度新卒採用といえると思います。
(取材日 2011/10/26)

株式会社日経HR 日経就職ナビ・渡辺茂晃編集長 短くなった企業研究期間。
学生は発展途上中という前提で選考を

株式会社日経HR 日経就職ナビ・渡辺茂晃編集長

学生側の傾向を見ると、危機感を持って例年より早い段階からインターンなどに取り組んできた層と、就職サイトの12月オープンにあわせて比較的ゆっくりした立ち上がりの層にくっきり分かれている印象です。ただ、圧倒的多数派は後者なので、おそらく学生のかなりの部分が「自分にあう企業」「やりたい仕事」などが不明確なまま、4月からの選考に突入する可能性があります。例年半年かけていた企業研究を、2013年度の場合は4カ月で行うわけですから、就職活動を通しての学生の仕上がり具合も例年よりもかなり低くなると考えるべきでしょう。

これは、企業側が前年までと同じ採用水準を維持した場合、必要な人数に内定を出せないことを意味します。そのため、母集団の数を競う時代ではないといわれますが、やはりそれなりの規模の母集団を形成して質を高めることや、今は未熟であっても今後の「伸びしろ」を的確に見抜くコンピテンシー面接の徹底…といった対策が必要になるでしょう。また、春のピーク時に充足しなかった場合、初夏、夏、秋…と採用を継続するケースも増えると思います。中堅・中小では予算やマンパワーも限られる中での長期戦となりますので、現場には相当な工夫や努力が求められることになるのではないでしょうか。

さらに、この1~2年の傾向として「内定がゴール」ではなくなったことがあります。志望企業からの内定を得た後も、なんとなく決めきれずに就職活動を続ける学生が増えているのです。企業研究が不足すると思われる2013年度は、この傾向にさらに拍車がかかるかもしれません。これに対しては、学生が十分納得して内定承諾できるだけの情報提供と相互理解に力を入れていくしかないでしょう。

ただ、欧州の金融問題やタイの洪水、円高…など、経済の先行きを読みにくい要素が多々あります。すべての企業が活動期間を長期化させてまで予定人数を採用するかどうかは今の段階では何ともいえないところです。その一方で、グローバル人材としての留学生採用に力を入れる企業や、未熟な新卒よりも中途採用に力を入れるといった動きがより強くなるのではないでしょうか。年間スケジュールが大きく変わった2013年度は、新卒採用そのものが多様化するきっかけの年になるかもしれません。
(取材日 2011/10/28)

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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